取り返せないと知りながら(2025年5月 マカオカジノ旅記③)

朝は、ちゃんとやってきます。
前日の大敗がなかったことのように、マカオの朝は明るく、容赦がありません。

 

 

スターワールドホテルのレストランで、イングリッシュブレックファーストを取りました。
どれも美味しいはずなのに、胃の奥に重たく残ります。

――今日も、勝負する。

そう決めていなければ、この朝食はただの贅沢だったはずです。

 

 

本日も引き続き、スターワールドで勝負続行。
場所を変える気にもなれませんでした。

前日の大敗の傷は、まったく癒えていない。
むしろ、静かに鈍痛として残っています。

ETGの画面を前に、勝負するテーブルを替えながら勝負を続けます。
少し勝っては戻され、戻したと思えばまた削られる。

負けを取り返すというより、 これ以上負けたくないという気持ちだけが前に出ていました。

気づけば、金額ばかりを見つめていて、 勝負をしている実感すら薄れていきます。

 

 

昼を過ぎたあたりから、集中力が明らかに落ちてきました。
数字を追う目が鈍り、判断が雑になっていくのが、自分でもわかります。

ETGは、疲れている人間に容赦がありません。
感情が動かないぶん、気づかないうちに時間とお金だけが削られていきます。

これは危ない。

そう思い、珍しく自分を止めて、部屋に戻ることにしました。
負けて席を立つのではなく、疲れて離れる。
それだけでも、少し成長したような気がしました。

 

部屋に置いてあったフルーツを一口かじります。
果物の甘さが、妙に現実的でした。

――ああ、自分は今、かなり疲れている。

ようやく、その当たり前の事実を認められた気がします。

 

少し休んだあと、再びカジノへ。
結局、戻ってしまうのがカジノ旅です。

人の気配を感じない画面相手の勝負は、感情の起伏が少なく、そのぶん時間の感覚を奪っていきます。

流れは、やはり大きく変わらない。
じわじわと削られ、たまに戻し、また削られる。

夜遅くまで粘って、タイムアップ。

結果は、ちょい負け。

 

夜遅くまで粘って、タイムアップ。

結果は、ちょい負け。
致命傷ではないけれど、希望が見える数字でもない。

この時点で、はっきりとわかっていました。

――今回の旅の負けを、すべて取り返すのは難しい。

それでも、不思議と心は落ち着いていました。
昨日までの焦りや苛立ちは、少し影を潜めています。

負けを受け入れ始めたのかもしれません。
あるいは、ようやく現実を直視できるようになっただけなのか。

カジノでは、 「まだ時間がある」
「明日がある」

そんな言葉が、何度も頭をよぎります。

でも本当は、わかっている。
明日が最後だということを。

こうして、マカオ最終日前夜。
勝ち負けよりも、 この旅で何を持ち帰るのかを考える時間が、静かに始まりました。

つづく